帝国ホテル。かつて‘東京御三家’として不動の地位を確立した、日本が世界に誇る高級ホテルです。
そのメインダイニングにあたるのが、レ セゾン。記念日に初めて訪れてみました。
個人的な先入観としては、’帝国ホテル’という名前の重みと、受け継がれてきた伝統の縛りとで、きっと’王道中の王道’なフランス料理がでてくるのだろうと思っていたところでしたが、いい意味で裏切られる結果となりました。
レ セゾン。時間が止まったようなクラシカルな佇まいでありながら、お皿の上はライブ感のある’現在’でした。まるで料理を通してシェフの生き生きした存在感が伝わってくるよう。帝国ホテルという名前がもつイメージから解き放たれた、なかなか攻めてるフレンチでした。
アミューズ ブーシュ。
ぱっと見味の予測がたてにくいビジュアル。でも口に入れた瞬間、どれも’新しい食感’と’王道の味’のよいバランスを保っていることがわかります。
この四つ葉はひとつひとつ見つけてきているんですよ、とサーブしながら教えて頂く。
サーモン。火入れが見事でした。風味豊かでいて生臭くない、しっとりした食感。何をどんな風に感じて欲しくてこう調理しているのか明確に伝わる火入れでした。
ソースをアイスクリームやシャーベット状にして添えるのは最近どのお店でもよくみかけますが、ちゃんとそういう流行りにも乗っているわけです。
お魚の上に乗っているソースは、ひとかけらひとかけらがきちんと役割を持ちながら調和しています。トマトはきちんと酸味を主張、ザクロの甘味ときゅうりの食感、どれも魚本来の味を邪魔したりしません。
新鮮であると同時によく練られた組み合わせでした。こういうのを食べるとシェフのモチベーションやクリエイティビティを感じます。
お肉も同じく。素材本来の美味しさのひきだしかたと、ソースの役割やバランスをちゃんと考えている。余分なものがないです。スパイスの効かせかたも秀逸。
プレデザート。こちらはシンプルでストレートなシャーベットでした。こういうのを挟むところも良いです。
驚きの連続だと疲れてしまうことがあるから。
メインのデザート。食感を楽しんでください、とのこと。サクサクの軽いメレンゲを少しずつ崩しながら頂くと、中から濃厚でいて’奇をてらいすぎない’クリームが出てくる。
ここでも ’個性的な食感’と’王道の味’のバランスのよさが光っていました。
食事を終えるころには、自分のなかで帝国ホテルそのものに対するイメージが変わっていることに気づきました。
もともとは、時間が止まったような’古き良き’、伝統的なホテル。時にはその伝統を守ろうとするあまり、時代の流れに取り残された化石のようなホテル、というイメージすらあったのです。
でも彼らの’顔’であるメインダイニングが、こんなにも生き生きして新鮮であるのなら、このホテルはまだ生きているし、’若いホテル’たちと闘えるでしょう。
シェフの名前はティエリー ヴォワザン。フランスのシャンパーニュにある三つ星レストランで高名なシェフに可愛がられていたところを、妻子をつれて日本にやってきたのこと。
フレンチシェフとしてのキャリアを円熟させていくなかで、彼がどのような決意で日本を選んだのかは想像にかたくないですが、
彼の強い意志と、帝国ホテルがこれまで築き上げてきたものがうまくマッチして、新しい風になるといいなと思います。
色々言いましたが、やはり帝国ホテルは抜群の安定感を誇るホテル。その歴史や品格ゆえ、特に大切な目上のかたや年配のかたをおもてなしするには欠かせない存在なのです。(なんだかとらやみたいですが)これからもずっと現役で、日本を代表するホテルでいてほしいものです。
ココロ✖️グルメ 心理士の食べ歩き日記
美味しい、だけじゃ満足できない。わがまま食いしん坊のアラサー臨床心理士が、世界中の美味しいものを求めて食べ歩くブログ。東京・ロンドン中心です。
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